氏(大阪地検特捜部副部長))を聴いてきました。会場は法経第8教室の予定だったのが、人数オーバーで急遽、第4教室に移動です。私は開演時間の5分前に行ったのですが、レジュメの部数が切れてしまっていました。周りの学生さんの話に曰く、「こんなに人が多いのは初めてだ」と。
地検特捜部とは検察庁内で独自捜査を行う部だそうで、検察の中でも激務だそうです。城さんは検事になって7年目に特捜部の試験を受けたそうです。
特捜部は少数精鋭です。東京地検特捜部が、検事の人数が36名ほど、大阪では12、名古屋では8くらい。検事が全国に1800人ほどいる(ということは50/1800くらい?)。
内部はさらに、知能犯を扱う部署、経済事件を扱う部署といったように分かれており、少ない人数がさらに少ない。もっとも事件によっては他部からも応援、東京地検なら全国から集められることもあるそうです。ちなみにライブドア事件は汚職系の部署がやったそうですが、この手の事件は経済系の部署がやることが多いそうです。
さて、特捜部のお仕事は、取り調べ、とくに
自白を取ることが極めて重要であることを強調しておられました。
特に知能犯等では客観的な証拠はあまりなく、また捜査を行う上でも重要な地位を占め、さらに日本の知能犯については主観要件が比較的大きなウェートを占めているそうです。また、組織的・大規模な事件では、
事件の全容解明には自白が欠かせないといえるそうです。後の質疑応答では、自白事件では法廷が犯人の反省の場としても機能するため、自白を促すことは
再犯の防止にもつながるだろうという点も指摘されてました。
それではいかに自白を取るのか。
これが(驚くべきことに、というべきか)ひたすら説得する、のだそうです。
城さんは国連の東アジアの刑事の何だか(失念)もやっておられたりするので、アジア諸国からの研修生に日本の刑事司法制度を説明することもあるそうですが、こうした自白の重視(しかも(当然ながら)拷問は行わない)することについては驚かれるらしいです。日本の特徴として自白率の高さを上げることができるけれど、この理由の説明は簡単ではない、と。例えば文化の共通性なんかも理由となりうるだろうと。まぁ私だって、白人や黒人に取り調べられるよりは黄色人種に取り調べられた方が自白しやすそうな気はしないでもないです。
主に自白を得るための取り調べですが、これは基本的に、1人の検事が1人の被疑者に専属で説得を行うことが普通のようです。何せ取調べのための勾留期間には限り(たしか20日)があります。その間に被疑者の心を開き、自白を得なければなりません。取調べに当たる検事には大変なプレッシャーがかかるみたいです。
話を聞く限り、思った以上に
ヒューマンな要素が大きいです。被疑者は例えば「家族のため」に否認する等、利己的というよりは利他的な否認が多い。そこで説得にも人的要素が大きく絡み、例えば生立ちや家族の話題等が多くなるそうです。取調べでは第一印象、つまり初日が重要で、そのときには被疑者に関する情報は頭に叩き込んでおき、被疑者と一心同体になったつもりで話すそうです。自白を得ることのプレッシャーは強く、城さんは日が進むに連れて食事の量が減ってくそうです。
人的要素が強く表れた一例として、ある放火魔が18日目の夜に、突然泣き出して自白したときのことを述懐されました。なんでも自分が放火犯となれば名士たる父親は死んでしまうと思い自白できなかったけどやっぱり我慢できなかった云々。
また、大蔵官僚の贈収賄が騒がれたあのときも、自白を取ることに失敗すると法務省と大蔵省の関係にまで影響しかねないというプレッシャーがかかったそうです。
もちろんここで得る自白は真実の自白でなければなりません。「Aが主犯という趣旨の自白ならするぜ」と持ちかけられることもあるとか。
さて、特捜部のお仕事の流れを、1998年に和歌山市長(当時)を収賄で逮捕した事件を例に。
この事件の発端はなんでも農協が破綻したことから。農協というのはそうそう破綻するものではなく非常に珍しわけで、何か裏があるんじゃないかと。なんかたれ込みもあったみたいで。
というわけで内偵開始、なのですが、その後の捜査手法等はここに書いてしまうと不正する側が気をつけちゃうのでオフレコ。んで、それがきっかけで芋づる式に市長まで。あと山口組の組長が収賄(贈賄ではなく!)として絡んだとか。
書ける程度の話として。不正に組織のトップが関わっていない時は、トップに協力を求めることができるので捜査が楽。トップまでグルだと割と大変。
こんな感じで、18:25頃、質疑応答に入りました。予定では18:00頃から質疑応答に入るつもりだったらしいですが。だいたい19時くらいまで?質問量もなかなか多く、京大生さんは積極的だなぁと。質疑応答は私の解釈で歪められている可能性が特に大きいので注意。
Q1:被疑者側の弁護士について
A1:大阪の弁護士会は強いねぇ。毎日接見を要求する等、ぶっちゃけ鬱陶しい。でもそれは立場の違いであって、嫌いじゃない。ただしアンフェアなやり口をしちゃ駄目だね。調書に同意するっていうから証拠隠滅の恐れが無いと思って保釈に同意したのに公判では否認するなんてのはアンフェア。まぁそういう奴は以後信用されなくなるんだけど。
Q2:「汗水垂らして働く云々」発言について
A2:労働は「汗水」に限るわけじゃないけど、マトモに働く人を不正な手段で出し抜くのは駄目だよね。
あと、否認してる人は法廷を、否認した上で、勝つか負けるかのゲームのように思っているんじゃなかろうか。自白事件での法廷は被告人の反省を促し贖罪する場になり、反省によって犯人の更生、ひいては再犯の減少につながると思う。再犯が行われるということは、更生していれば泣かされることは無かったはずの人が泣かされるということであり、嫌だ。
検察の仕事というのは、誰からも褒められないことこそが最も素晴らしいことだと思う。褒められたり感謝されたりするときというのは犯罪がすでに行われてしまったといういこと。犯罪が無く、したがって人々が検察の存在を忘れるような社会こそが良い社会。
Q3:検察の「調査活動費」について
A3:担当ではないので新聞報道等を読んでる皆さんと同じ程度の知識しかない。予算が必要な場面はある、けれど、実際にどういう使われ方をしているのかについては把握していない。
Q4:裁判員制度について
A4:同制度の対象となるのは全事件の10%未満、5%くらいだろう。特捜部の担当する事件の殆どは同制度の対象外。ただし全く影響ないわけではないので対応の準備はしている。
素人が読む以上、証拠等の書類は短くする必要があるだろう。実際にどの程度まで短くしなきゃいけないのかは、模擬裁判等を行って測っているところ。
Q5-1:社会的に大きな事件は特別扱いされるのか。
A5-1:「大きいから」つぶすというような発想は基本的に無い。「怪しいから」調べる、のが基本。怪しむ根拠=証拠が無いと起訴できないし。調べようと思う最初の動機やモチベーションくらいには影響があるのかもしれないが、特別扱いは無い。
ちなみに、マスコミの報道と実際の捜査は大きく隔たっていることが殆ど。マスコミはさも事実が分かっているかのように報道するが、そんなものを証拠として提出できたらどれだけ楽なことやら。
Q5-2:他所からの圧力はあるか
A5-2:皆無。聞いたことも無い。圧力をかけてくるようなことがあれば、それは後ろ暗いことがあるということだろうから、むしろ捜査のターゲット。
ちなみにマスコミ的に「圧力で捜査が潰されたのでは」と報道されるようなものでも、たいてい単に自白が取れず起訴できなかっただけだったりする。
Q6-1:「ヤメ検」について
A6-1:私は嫌い。彼らは自分自身の前職を否定している。
Q6-2:取調べに熟練すると観察力が磨かれたりするのか、具体的に
A6-2:怪しいと感じることはあるが、本当のところは自白が取れてみないと分からない。
動揺していなさそうだと思ってその日の取調べを切り上げたのが、後日「割れ」た後に、自白寸前まで動揺していた、なんて言われたりする。
Q7-1:特捜部の持って行く段ボールの中身は何?
A7-1:殆ど紙。会社犯罪では紙の証拠が多い。日記、帳簿、証券、伝票etc。
電子化データも印刷して持ち出すことが多い。
経済犯罪の捜査では、お金の流れを調べることが中心になるため、紙に書かれた情報が極めて多くなる。
Q7-2:捜査の端緒について
A7-2:告訴・告発が多い。電話でのタレ込みや匿名の投書等もある。前述の和歌山市長のアレは倒産の報道が端緒。
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